「
貴重な丸薬を捨てて、
フンコロガシの糞玉を選び取るようなものだ」
(中公文庫「憑道 乱世の宰相(礪波護)」)
というような表現(引用)があって
ここ何年も気になっていた。
今日は調べてみた。
「憑道」での引用もとは
資治通鑑か五代史のあたりである
(だれを後任宰相にしよか、という会議の席で)
任圜(じんかん)は言った
「あなたが李琪さんでなく
崔協さんを大臣にしようというのは
例えて言うなら、
貴重な『蘇合の丸薬』を捨てて
フンコロガシの転がした糞を選び取るようなものだ」
資治通鑑: 唐紀二十七至後周紀五
圜曰:「明公捨李琪而相崔協,是猶棄蘇合之丸,取
蛣蜣之轉也。
この話は続世説新語や北夢瑣言その他にも採られているが
フンコロガシの糞は本によって
蜣蜋之轉 蛤蛛之轉 螗螂之丸
などに置き換わっている。
蜣蜋は蛣蜣と同じでフンコロガシだが
蛤蛛はクモ(蜘蛛)、
螗螂はおそらくはカマキリ(蟷螂、螳螂)だろうから
後の2つの場合は
糞でなくて、
クモやカマキリが他の虫を狩って作った肉団子、
ということになろう。
昔は
「フンコロガシの知恵」的なことわざ?もあったらしい
フンコロガシの知恵は
糞を転がすことにあるのである。
蛣蜣の智は
丸を転ずるにあり。
是なり。
(
蛣蜣之智在于転丸是也)
出典は「荘子」とされるが
今の荘子のテキストにはない言葉とのこと。
別名もいろいろある。
転丸(たまころがし)
弄丸(たまもてあそび)
推丸(たまおし)
ただ、
「丸」1文字で「糞のボール」を表しているようで
なんとなく気になる。
正露「丸」とか、
大丈夫だろうか…
「埤雅」にはこんな言葉あるとのこと
フンコロガシは鼻もないのに
香りをかぐ
蛣蜣、鼻なくして香を聞く
(蛣蜣无鼻而聞香)
「嗅臭(臭きを嗅ぐ)」
でなく
「聞香(香を聞く)」
としているのが絶妙である。
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「フンコロガシ」とはよく言うが
これがフンコロガシ、
というのを見た覚えがない
大概は「フンコロガシ、ただしくはダイコクコガネ」
のようなことになる
標準和名が「フンコロガシ」である、
特定の種はあるのだろうか?
あるいは糞虫の総体名なのであろうか?
博雅の教えを乞いたい
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「蛣蜣之智在于転丸是也」は
現存の「荘子」には見えないが、
晋崔豹「古今注」魚虫、
宋呉淑「事類賦」三十虫部注、
宋陸佃「埤雅」十、
南宋羅愿「爾雅翼」二五、
宋祝穆「事文類聚后集」四八、
元陰時夫「韵府羣玉」六、
などの多くの書物に、荘子の言葉として引用されているように、
荘子の言葉として広く信じられていたのである。(
中巌円月の思想と文学(孫容成)注245)
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蜣:
《唐韵》去羊切《韵会》墟羊切《正韵》駆羊切,並音羌。
《玉篇》蜣蜋,啖粪虫也。
《爾雅・釈虫》蛣蜣,蜣蜋。
《疏》蛣蜣,一名蜣蜋。黑甲,翅在甲下。啖粪土,喜取糞作丸而転之。
《荘子》蛣蜣之智在于転丸是也。
《古今注》蜣蜋能以土苞糞推転成丸,圓正无斜角。一曰転丸,一曰弄丸。
《関尹子•四符篇》蜣蜋転丸,丸成而精思之,而有蝡白者存丸中,俄去殻成蝉。
《埤雅》蛣蜣无鼻而聞香。
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…清代段玉裁『説文解字注』釈虫曰。
蛣蜣,蜣蜋。荘子云。蛣蜣之智在于転丸。
陶隠居云。憙入人粪中。取屎丸而却推之。俗名爲推丸。
…以下略
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