2016年1月10日日曜日

余桃之罪

食べかけの桃、
余桃

意志が硬めであったこともあって
ざっくりとして線になったが
それもそれで悪くはないか。
15mmx15mm


子どもの頃とある本で見た
余桃の罪、という言葉が
何十年も心に刺さっている

「韓非子(かんぴし)」にある話はこうである

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 美しい娘、弥子瑕(びしか)は
 衛の国の王様の寵愛を受けていた

 あるとき果樹園で
 弥子瑕が1つの桃を口にすると
 とても甘くおいしかったので
 思わず王様に
 「おいしいんです、食べてみてください」
 と差し出した。

 王様は喜んで
 「私のことを愛してくれているんだな、
 自分で食べてしまいたかっただろうに
 思わず私に差しだすなんて」
 といった。

 …年月がたち、容色の衰えとともに
 弥子瑕への寵愛も衰え、
 ついには刑罰を加えられることになった。
 処罰の理由の一つは
 「かつて食いかけの桃(余桃)を
  王様に食べさせる無礼を働いた」
 というものだった。
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寵愛の衰える様子の
 色衰え愛弛(ゆる)む
というのも、あまりといえばあんまり。
無慚な表現。


50年近くも生きると、
心中
「これもわが身に科せられた
 余桃之罪というものか
 (やんぬるかな!)」
と歎じるような場面もときにある。

残酷だけど
どこにでもある普通のことであろう。


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韓非子・説難(ぜいなん)

昔者弥子瑕有寵於衛君。    昔、弥子瑕、衛君に寵あり。
衛国之法、             衛国の法
窃駕君車罪刖。          ひそかに君の車に駕するは罪刖(げつ)。
弥子瑕母病。             弥子瑕の母、病む。
人間往、夜告弥子。       人ひそかに往き、夜、弥子に告ぐ。
弥子矯駕君車以出。       弥子矯(いつわ)り君の車に駕し、以って出づ。
君聞而賢之曰、          君、聞きて、これを賢として曰く、
孝哉。為母之故、忘其刖罪。  「孝なるかな。母のための故に、その刖罪を忘る」。

異日与君遊於果園。       異日、君と果園に遊ぶ。
食桃而甘、             桃を食(くら)うに甘し、
不尽、 以其半啗君。      尽くさずして、その半ばをもって君に啗(くら)わす。
君曰、                君曰く、
愛我哉、              我を愛するかな。
忘其口味、以啗寡人。      その口味を忘れ、もって寡人に啗わす。

及弥子色衰愛弛、        弥子、色衰え愛弛むに及び、
得罪於君。            罪を君に得。
君曰、               君曰く、
是固嘗矯駕君吾車、      l是れ 、もと、嘗て矯(いつわ)りてわが車に駕し、
又嘗啗我以余桃。        また嘗て我に啗(くら)わすに余桃をもってす、と。

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