2016年8月5日金曜日

南面王樂

定時にさぁ~っと帰ろうとしたら
「飲み会ですか?」
といわれたので
「そー」
と背中に応えてさっさと帰る。

手も洗わず冷蔵庫から取り出したビールを持って庭に出て
 ぱっかん!
と開ければ言に違わぬ「飲み会」である。

下一酒  葉っぱの下で1缶のビール
獨酌無相親  一人ぼっちで飲む
舉杯邀苦瓜  コップを差し上げてゴーヤを迎え
成三人  隠元豆と合わせて
          三人で飲むことにする

の趣きか。

…たとえそれが「第三のビール」であったとしても
                           である。


飲むだけ飲んで放っておけばいいのに
フェンス沿いの花壇ならぬ「菜壇」の土がカッチカチなのが
どーしても気になり
掘り返してみる。

わかってはいたけど
根っこが充満している。
ゴーヤ?胡瓜?

根っこ、
こんなにずたずたにしていいか?

不安でもあるけれど
飲んだ勢いで思いっきり鋤き返し、
酔いに任せて堆肥をぶち込み、
苦土石灰と化学肥料も少々混ぜこむ。

そしてまたビ~ル。
どうなるかなぁ。





…人にも自然にも煩わされない時間。

 「南面王の楽しみ」というべきか。









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
荘子が旅しているとき
落ちているドクロを見つけた。

荘子はそれを棒でつつきながら
「どうしてこんなことになっちまったんだ。
 悪さをしたのか?飢え死に?寿命?」
そういってドクロを枕にして寝てしまった。

そしたら夢を見た。

夢に現れたドクロはいう
「まったくもう、
 地獄のような世間に生きる人間の浅はかな知恵で
 平和で平等で平安な世界をけなすとは
 いやはやもう」

荘子は「ほんとか?」という思いで
「なんとかしてあンたを生き返らせようか?」
というとドクロは、
「やめれ!
 この王様気分の楽しみを捨てて
 世間の苦労にもどれってかぁ?」

と、
いいましたとさ。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

莊子之楚。見空髑髏。昂然有形。
檄以馬捶。因而問之曰。
夫子貪生失理。而爲此乎。
將子有亡國之事斧鉞之誅。而爲此乎。
將子有不善之行。愧遺父母妻子之醜而爲此乎。
將子有凍餒之患。而爲此乎。
將子之春秋故及此乎。

於是語卒。援髑髏。枕而臥。

夜半髑髏見夢曰。
子之談者似弁士。視子所言。皆生人之累也。
死則無此矣。子欲聞死之説乎。
莊子曰。然。

髑髏曰。
死無君於上。無臣於下。
亦無四時之事。従然以天地為春秋。
雖南面王樂。不能過也。

莊子不信曰。
吾使司命復生子形。為子骨肉肌膚。
反子父母妻子間里知識。子欲之乎。

髑髏深顰蹙曰。
吾安能棄南面王樂。
而復爲人間之勞乎。

         …荘子 至楽篇

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上述の「詩」のモトは李白の「月下独酌」の冒頭

花間一壼酒  花の下、一壺の酒
獨酌無相親  一人ぼっちで飲む
舉杯邀明月  杯をあげて酒の上に月を映し
對影成三人  自分の影と合わせて
          三人で飲むことにする

0 件のコメント:

コメントを投稿